CAS凍結技術とは
単純に冷やして凍らせるという事に主眼を置いてきた、旧来の急速凍結技術では、被凍結品に壊滅的組織崩壊を誘発させてしまう事が問題となっておりました。
CAS凍結は、冷凍庫内に水分子を振動させる精密に設計されたエネルギー空間を作り上げる事で、凍結の過程で進行する、分離や変質と言う分子の挙動を極限まで予防することを可能にした、安定した凍結を実現する最新の凍結イノベーションです。
儚い産地鮮度を封印
この様な最新のイノベーションと、原料品質からの見直しが進むことで、製品寿命が極めて短く、産地から輸送する事が困難であった風味豊かな多くの食材を、お客様のお手元まで確実にお届けできる環境が整いました。
もう一度原料から磨き直し、全世界のお客様と新しいコールドチェーンで繋がり直せるよう、生産者と共に、品質作りに挑んでいます。
CAS凍結誕生ものがたり
生クリームを凍らせたい
洋菓子製造において多用される生クリームは、品質の安定化と製造作業の効率化から、凍結技術の開発が待たれていました。
今から40年以上も前、この様な市場ニーズに応えようと、ケーキの凍結に必要となる基礎研究や冷凍機械の開発が、この日本で始まります。
生クリームは、脂質を泡立てて空気を抱き込ませた細やかな泡を作る事により、独特のふわふわ食感を作り出します。
しかし、これに冷風をあてて凍結すると、水が分離を起こし、解凍すると粗悪なバターに変化する現象に悩まされていました。
凍結すると何が起こるのか
(写真:食紅水溶液の緩慢凍結)
不純物の混じった水を凍らせると、写真の様な成分分離を起こすことが、日常の経験則からも感じられます。
低温環境に置かれ、物が凍るという一見静粛に見える凍結課程の中で、水分子は不純物を追い出しながら氷結晶を拡大していきます。
また、水は、他の物質とは大きく異なる特徴として、固体になると体積が膨張する特徴も持ち合わせています。
この様な特性が複合的に絡み合う事で、凍らせた食品を解凍すると、風味が著しく劣化し、実用に耐えないという問題がこれまで発生していました。
生クリームが凍った後
足掛け20年にわたる開発期間を経て、生クリームを完全に凍結する技術が確立しました。
その技術完成度の高さが、MOFの技術者、料理界の重鎮から驚きを持って評価され、料理大国フランスにおいて大きな話題を集め、菓子用凍結機として錦を飾ります。
菓子の完全凍結を目標に開発されたこの技術はしかし、料理・素材凍結用としての完成度が足りないと評価され、フランス料理界ミシュランシェフからの提案により、更なる技術改良が進められていきました。
技術はより高精度に
生クリームを凍結したいというニーズから始まった研究は、30年を超える技術開発の末、食材や料理の長期保管を可能とするCASという新たな凍結イノベーションへの昇華を果たしました。
「そのままを凍らせ、そのままに戻す」という一見単純な事を実現するために、途方もない歳月と研究費が費やされてきましたが、この成果は更に精度を高め、今では再生医療の世界で、細胞保存技術として新たな世界を築き始めています。